診療科・部門

臨床検査部

令和5年10月改訂

概要

臨床検査部は、「迅速」かつ「正確」な検査データを提供し、診療に役立つ臨床検査をモットーに業務を遂行しています。部内は、「生理・化学検査室」と「遺伝子病理検査室」の二室に分かれています。

「生理・生化学検査室」には生化学検査、血液検査、生理機能検査の3検査部門、「遺伝子病理検査室」には病理検査、細胞診検査、遺伝子検査、細菌検査の4検査部門があります。

私たち検査部職員は、がんセンターの基本理念に基づき、最良の心あるがん医療の一翼を担う診療支援を目指しています。その成果の一つとして、臨床検査を行う能力を十分に有していることを認定する国際規格であるISO15189の認定を、2018年3月15日より受けています。

生理・化学検査室

生理・化学検査室は、生化学検査、血液検査、生理機能検査にわかれます。

生化学検査

生化学検査は、生化学検査、免疫血清検査、一般検査を担当しています。

生化学検査では、化学反応と光学的検出法を組み合わせた生化学分析装置で血液中の成分を迅速かつ精確に測定し、診察前に報告できるよう努めています。

免疫血清検査では、感度・特異度の高い抗原抗体反応を原理とした免疫学的測定装置で腫瘍マーカー、ホルモン、肝炎ウイルスなど微量の物質を測定し、病状把握、副反応・副作用の有無、治療効果の判定に貢献しています。

一般検査では、尿の成分を調べる尿一般検査、尿中の細胞、微生物、結晶を観察する尿沈渣検査、便の血液反応を調べる便潜血検査、悪性腫瘍や感染などが原因で貯留した胸水、腹水などを分析する検査を行い、病態の推定に役立っています。

診察前検査に対応した迅速検査体制をとっており、生化学検査は採血後60分以内に、免疫血清検査は70分以内に、一般検査は項目により異なりますが30分~60分以内に各診療科へ結果を報告しています。

生化学検査装置
免疫血清検査装置
免疫血清検査装置
尿一般検査装置・尿中有形成分分析装置

血液検査

貧血や炎症の指標となる赤血球、白血球などの血球数の算定(血算)、血球の分類、血液の固まり具合を調べる凝固検査、骨髄中の細胞を調べる検査などを行っています。

診察前検査に対応して、外来の血算結果は30分以内に各診療科に報告する迅速検査体制をとっています。血液の病気(白血病や悪性リンパ腫など)では、血液中に異常な細胞が出現し、その細胞はそれぞれに特有の形を示しています。

またフローサイトメトリーによる細胞表面抗原解析を行っており、白血病や悪性リンパ腫などの診断や治療効果判定などに寄与しています。骨髄移植や末梢血幹細胞移植のためのCD34陽性細胞の測定も行っており、その役割は大変重要です。

血液検査室では外来採血も担当しています。採血支援システムを導入し、人為的なミスを防ぐと共に円滑な患者誘導と安全な採血業務を行っています。朝8時採血も実施し、外来化療センターの混雑緩和に貢献をしています。

多項目自動血球分析装置
全自動血液凝固測定装置
細胞自動解析装置
採血室

生理機能検査

生理検査では、直接患者さんと接して検査を行います。患者さんの負担とならないように十分に配慮して検査をおこない、診断・治療の手助けとなる検査結果を迅速に報告できる体制になっています。また、患者さんが安心して検査を受けることができる環境づくりにも力を注いでいます。

心電図検査

不整脈や虚血性心疾患など心臓に異常が無いかを調べます。ベッド上で安静にして記録する安静心電図のほか、運動負荷後の心電図や24時間の心電図を記録するホルター心電図も行っています。

呼吸機能検査

大きく呼吸をすることで肺活量や換気能力を調べます。呼吸器の異常の有無について検査するほか、手術前にも行います。

超音波検査

超音波検査装置を用いて、心臓や乳腺の状態を詳しく調べます。ベッド上で安静にしている患者さんの皮膚の上から超音波を発する器具(プローブ)をあてて検査をします。検査に用いる超音波は生体に害がないとされています。

その他、ピロリ呼気検査や聴力検査を実施しています。

主な実績

2019年
  • 宿直者の協力を得て生化学コントロールの早朝測定を開始したことにより、業務負担の増加を最小限に抑えつつ朝の結果報告開始時間を30分前倒しすることに成功。さらに高速凝固採血管(トロンビン添加)の使用を開始し、生化学項目の検査所要時間を約10分短縮。
2020年
  • 化学発光免疫測定法(CLIA法)を原理とする免疫分析装置を、電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)を原理とする免疫分析装置へと更新。高感度化・迅速化が実現し、腫瘍マーカーなど免疫血清検査項目の検査所要時間を約20分短縮。その後、他機種で測定していた腫瘍マーカーの項目を集約することにより、所要時間をさらに10分短縮するのと同時に、試薬コスト等の大幅な削減と業務負担の軽減に成功。
  • COVID-19感染拡大に伴い、院内でのSARS-CoV-2抗原定量検査を開始、100件を超える大量のスクリーニング検査や、緊急入院前検査の24時間対応を開始。
2021年
  • 尿定性自動検査装置を導入。これまで半自動だった尿定性検査の業務負担が大幅に軽減された。
2022年
  • 2規格5種類を使用していた感染症コントロールを、新たに発売された1規格3種類のコントロールに集約化。業務負担の軽減とコスト削減に成功。
  • SARS-CoV-2抗原定量検査を見直し、鼻咽頭検体の測定を電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)に変更。大幅なコスト削減に成功。
2023年
  • 電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)を用いた、NT-proBNPの院内測定を開始。
  • 化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)を原理とする免疫分析装置を更新。他装置で測定していたMTXとTCLの測定を移行し、業務負担の軽減に成功。
2024年
  • 電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)を用いた、ACTHとCORTの院内測定を開始。
  • 生化学検査装置更新予定。

遺伝子病理検査室

遺伝子病理検査室は、以下の4つに分かれます。

病理検査

内視鏡検査や針穿刺などにより採取した生検組織や、手術で摘出した腫瘍臓器の病理標本を作製しています。手術中の迅速病理診断にも対応しており、がんの診断や手術中および術後の治療方針の決定において重要な役割を果たしています。 

腫瘍組織は免疫染色などの分子遺伝学的検査の進歩に対応した処理や保存が行われています。免疫染色とは、特定のタンパク質の存在を可視化する技術であり、がん細胞の特性を詳細に分析することができます。これにより、原発不明がんや転移性がん、悪性リンパ腫など、様々な腫瘍に対して免疫組織学的鑑別が可能となります。また、がん関連遺伝子産物やがん関連ウイルスの検索システムも構築されており、これらの検査はがんの診断精度を高めるために非常に有用です。 

細胞診検査

細胞診検査室では、様々な方法で得られた検体を対象としています。例えば、子宮膣部などから綿棒やブラシなどで擦過して得られた検体や、喀痰や尿など体内から排出された検体、さらには乳腺や甲状腺、内視鏡下での膵臓などから針で穿刺吸引して得られた検体などがあります。これらの検体から作製された標本を顕微鏡下で観察し、悪性細胞の有無を調べています。 

また手術時の胸腔・腹腔洗浄液の迅速診断、超音波内視鏡下での穿刺材料の迅速処理など「迅速」な診療支援も行っています。 さらに、外来や病棟での穿刺吸引の際にはベッドサイドへ赴き、良好な標本の作製に勤めています。 細胞診検査は、学会で認定された細胞検査士を中心に業務を行われています。 

遺伝子検査

遺伝子検査室では、手術や生検検査から得られる病理組織標本や細胞診検体を用いて、治療選択や治療効果予測のために有用な遺伝子検査結果を臨床に提供しています。

具体的には肺癌におけるEGFR、KRAS、BRAF、MET、ALK遺伝子変異などの分子標的治療薬効果予測検査、マイクロサテライト不安定性(MSI)検査や免疫染色による免疫チェックポイント阻害剤の効果予測検査などの薬剤適応判定のためのコンパニオン検査や、膵臓癌におけるKRAS遺伝子、軟部腫瘍における融合遺伝子検索など病理診断の補助となる検査を実施しています。これらの検査には旧来からのPCRをはじめとする遺伝子検査法とともに、次世代シーケンサー(イオントレントIon PGM Dx、IonS5;ThermoFisher社)なども院内導入し、がん専門病院の検査室として最先端の遺伝子変異検索システムを構築しています。

またがん遺伝子パネル検査あるいは外部委託で実施している固形腫瘍に関する遺伝子検査についても担当しており、病理検査室と遺伝子病理診断部とともに検体の作成・依頼・検体提出および結果報告などの面で貢献しています。

Real-time PCR
Genetic Analyzer
次世代シーケンサー(イオントレントIon PGM Dx)
次世代シーケンサー(Ion S5-Chef)

細菌検査

細菌検査室では主に、患者さんから採取された検査材料(喀痰、尿、便、血液など)を用いて、感染症の原因菌を特定し、その菌にどの薬が効くか(薬剤感受性)を調べています。この原因菌の特定や薬剤感受性に関する検査は、感染症の診断および適切な治療に直結する重要な検査です。 具体的には、患者さんから採取された検査材料を顕微鏡下で確認し、微生物だけでなく、細胞や析出物など、様々な情報を含めて総合的な報告を行います。また、培養検査によって原因菌を検出し、必要に応じて薬剤感受性検査を実施しています。

作業風景
培養した細菌
顕微鏡でみた細菌

近年では、薬が効かない薬剤耐性菌の増加が懸念されており、これらの菌を検出する細菌検査室は、院内感染対策上、重要な役割を担っています。
その他には、全自動遺伝子解析装置を用いた新型コロナウイルスの検査やイムノクロマトを用いたインフルエンザなどの迅速検査も実施しています。

また、細菌検査室の技師は感染制御部と連携し、院内感染対策チームの一員として、感染症・薬剤耐性菌に対する発生状況や変化を継続的に監視しており、院内感染防止活動に取り組んでいます。さらに、抗菌薬カンファレンスを毎日実施し、適正な抗菌薬使用を推進しています。これらの活動を通じて、患者さんの感染管理および治療に貢献しています。

スタッフ紹介

真砂 勝泰 (まさご かつひろ)
役職
臨床検査部医長
専門分野
分子腫瘍学、呼吸器内科学、腫瘍内科学
学会・資格
日本内科学会 総合内科専門医
日本呼吸器学会 専門医・指導医
がん治療認定医
日本医師会認定産業医
家族性腫瘍学会 家族性腫瘍コーディネーター

認定資格

  • 細胞検査士 9名(内 国際細胞検査士 1名)
  • 認定血液検査技師 5名
  • 認定サイトメトリー技術者 1名
  • 認定臨床化学・免疫化学精度保証管理検査技師 1名
  • 超音波検査士(循環器)6名、(体表)3名、(消化器)1名
  • 認定心電図検査技師 1名
  • 日本不整脈心電学会認定心電図専門士 3名
  • 認定輸血検査技師 1名
  • I&A視察員 1名
  • 認定病理検査技師 4名
  • 遺伝子分析化学認定士(初級)3名
  • 認定遺伝子染色体検査技師(遺伝子分野)1名
  • がんゲノムコーディネーター 3名
  • 二級臨床検査士(循環生理)2名、(微生物)1名、(呼吸生理)1名
  • 緊急検査士 4名
  • 有機溶剤作業主任者 3名
  • 特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者 4名
  • 危険物取扱者(乙種4類)4名

研究実績

研究・学会発表

2023年度

学会発表:4回

2022年度

学会発表:1回

2021年度

学会発表:7回

2020年度

紙上発表:学会誌 2編
学会発表:4回

2019年度

紙上発表:学会誌 1編
学会発表:7回