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悪性リンパ腫

悪性リンパ腫とは

血液の細胞は、全ての血液のもととなる造血幹細胞から成熟(分化)して造られ、白血球、赤血球、血小板になります。白血球は免疫をつかさどる細胞であり、さらに分けると、好中球やリンパ球が含まれます。リンパ球の中には、T細胞、B細胞、NK細胞という性質の異なった細胞があります。若いリンパ球は主に骨髄の中に存在し、成熟するとリンパ節やその他の組織に現れて、それぞれの場所で細菌やウイルスから体を守るために働きます。悪性リンパ腫は成熟したリンパ球ががん化したものです。リンパ腫細胞はがん化した場所で無秩序に増えるため、リンパ節などがん化した臓器の腫れが起き、時間が経つにつれその他の場所にも広がっていきます。

自覚症状

リンパ腫細胞は、リンパ節臓器と、リンパ節以外の臓器と、どちらで増える場合もあります。リンパ節で増える場合は、首や腋、足の付け根などのしこりとして感じたり、おなかの腫れとして感じることがあります。また、扁桃腺が腫れたり、脾臓が腫れておなかの張った感じがすることもあります。これらの腫れやしこりにはあまり痛みはなく、風邪の時に腫れる場合よりも大きな腫れとなり、消えることなく徐々に大きくなっていきます。リンパ節以外には、骨髄や皮膚、消化管、脳、副鼻腔、肺、肝臓、腎臓、精巣など、様々な臓器にリンパ腫ができることがあります。皮膚に病変ができると、まだらで盛り上がりのある皮疹が現れたり、かゆみが出たりすることがあります。消化管に病変ができると、腹痛や便の変化(黒色便や便秘など)が現れます。

また、全体的な症状として、風邪などを引いていないのに続く熱や、寝汗、原因のはっきりしない体重減少などがあり、リンパ腫のB症状と呼ばれています。その他、倦怠感や、息切れなどの貧血の症状が現れることもあります。

しかし、リンパ腫の多くは、症状が乏しく、健診でレントゲンの異常や腹部エコーの異常などで発見される場合もあります。

統計

悪性リンパ腫はこの30年で罹患者が増加しています。2017年の統計では、日本における悪性リンパ腫の罹患者(診断された)数は34,571人で、70代に最も多くみられます。罹患者は人口10万人あたり男性で16.7名、女性で12.5名であり、若干男性の方が罹患しやすい傾向があります。また、悪性リンパ腫に罹患後の5年生存率は67.5%(2009年から2011年診断患者)です。

リスク因子

悪性リンパ腫はリンパ球の遺伝子に傷がつくことでできると考えられていますが、遺伝はしません。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)、エプスタインバールウイルス(EBV)など、一部ウイルス感染症やピロリ菌や膠原病などの慢性的な炎症と関連の深いものがあります。

診断、治療前の全身評価のために行う検査

病理検査

悪性リンパ腫の確定診断(どんな病気・病型か最終的に決定する診断)は、リンパ節などの病巣を外科的に取りだし、それを顕微鏡で見なければなりません。この検査のために、リンパ節などの病巣の一部の組織を取り出すことを生検(バイオプシー)と呼んでいます。外科的に取り出すのが困難な場合、場所によってはCTガイド下生検やエコー(超音波)ガイド下生検など、CTやエコーで病巣の位置決めをおこなって針を刺して組織の一部を取り出すことも行います。消化管病変や肺病変などは、内視鏡を使って組織を取り出すこともあります。

画像診断

どのくらいの大きさの病巣がどこまで広がっているかを調べる検査です。X線を用いたレントゲン写真検査やCT検査、PET検査、MRI検査、エコー検査などがあります。それぞれの特徴を生かして、からだの内部の病巣を画像としてとらえます。消化管の病変を検索するため胃カメラをおこないます。大腸に病変が疑われる場合には、大腸カメラも行います。

血液検査

肝臓や腎臓などの機能を調べるために採血検査をします。他に病気はないか、治療にどの程度耐えられるかを調べるためです。血液中の白血球や血小板、赤血球の数を定期的に調べることも必要です。血清中のLDHという名前の酵素や、可溶性IL-2レセプターは、リンパ腫の病勢を反映することがあります。

骨髄検査

血液を造る場所である骨髄にリンパ腫細胞が浸潤しているか調べるために、骨髄穿刺、生検検査もおこないます。

遺伝子に関する検査

がんは遺伝子が傷つくことによって起きる病気です。がん遺伝子の傷は、両親からもらった遺伝子ではなく、がん細胞のみに認められる傷で、生活しているうちに遺伝子が傷つき、それが原因でがんができるわけです。そのような遺伝子の異常は子孫に受け継がれていくことはありません。

悪性リンパ腫においても血液や生検のため取り出されたリンパ節を用いて、この検査をする場合があります。

心臓エコー検査、心電図検査

リンパ腫の治療で用いる薬剤には心臓に負担をかけるものがあるため、あらかじめ心臓の働きに問題がないか確認します。

髄液検査

リンパ腫細胞が脳や脊髄に存在している可能性がある場合、背中から腰椎の間に針を刺して髄液を採取します。

病型

悪性リンパ腫の病型は主に病理学的(病巣からとった組織を顕微鏡で見てどのような異常があるかを調べる方法)に決定されます。治療の方法や治療成績は病型や病巣の拡がりなどにより異なる場合が多く、病巣(腫れたリンパ節など)を試験的に生検して診断することが重要です。悪性リンパ腫は大まかに以下の2病型に分けられます。

ホジキンリンパ腫

この病型は日本における悪性リンパ腫の5-10%に見られます。一般的には、ホジキンリンパ腫は抗癌剤や放射線がよく効き、治療が予定どおりできれば治ることが多い(およそ70-90%)リンパ腫です。ホジキンリンパ腫の中には、大半を占める古典的ホジキンリンパ腫と、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫があります。病期の進んだ場合を除き、強い治療が必要なことは少なく、がんとしての性格はおとなしいと言えます。

非ホジキンリンパ腫

この病型は悪性リンパ腫の90%程に見られます。病理学的にさらに多くの病型に分類されます。進行の早さから大きく3つに分けられており、年単位でゆっくり進行する低悪性度リンパ腫、月単位で進行する中〜高悪性度リンパ腫、週から日単位で急速に進行する高悪性度リンパ腫に分けられています。中〜高悪性度リンパ腫は、数ヶ月の単位で進行する中悪性度リンパ腫ともう少し早く進行する中高悪性度リンパ腫に分けることがあります。また、リンパ腫の細胞の起源から、B細胞性、T細胞性、NK細胞性にも分けられます。

低悪性度リンパ腫濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、節性辺縁帯リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群など
中悪性度リンパ腫マントル細胞リンパ腫、節外性鼻型NK/T 細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T 細胞リンパ腫など
中高悪性度リンパ腫びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、末梢性T 細胞リンパ腫、非特定型、未分化大細胞リンパ腫など
高悪性度リンパ腫B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病など

以下の2型が頻度の高い病型です。

ろ胞性リンパ腫

低悪性度B細胞性リンパ腫の一種で、一般的には、進行が年単位でゆっくりです。従来の化学療法に対して反応性は良好ですが、再発を繰り返すため、治癒することが難しい場合が多いとされていましたが、最近では治療法の進歩により成績が向上しています。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

最も頻度が高く、中高悪性度B細胞性リンパ腫です。その中にも胚中心B細胞様(GCB)、活性型B細胞様(ABC)、CD5陽性など、性質の異なったものが含まれます。

病期分類

リンパ腫の病巣が拡がっているほど進んだ病期を表し、I期からIV期に分かれています。それぞれの病期で体重減少(診断前6ヶ月で10%以上)、発熱(38度以上)、寝汗(寝具の交換が必要)の症状がなければA、あればBと記号を付けます。例えばIIIA期などと表現します。

Ann Arbor分類

Ⅰ期病変が1か所に限局している
Ⅱ期2ヶ所以上の腫れがあるが横隔膜を超えない同じ側に限局している
Ⅲ期横隔膜の上下に病変がある
Ⅳ期
B症状
1つ以上のリンパ節外臓器(肝臓や骨髄など)に悪性リンパ腫の細胞が浸潤している体重減少(6ヶ月で10%以上)、発熱(38度以上)、寝汗(寝具の交換が必要)

予後予測因子

治療がうまくいくかどうかを予想するのに利用される要因を「予後因子」と呼びます。そのなかでも、中高悪性度リンパ腫の予後因子システムとして「国際予後因子指標(IPI)」あります。IPIでは、年令、血清中のLDHという名前の酵素の濃度、歩行や作業ができるかどうかといった全身状態、上記の病期、リンパ節以外にいくつ病巣があるかなどが重要な予後因子です。これら予後因子がいくつあるかによって4つのグループに分けられています。病型と国際予後因子により、治療効果が予測されます。その他、濾胞性リンパ腫やマントル細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫など、それぞれの病型に特異的な予後因子の組み合わせが見つかっているものもあります。

IPI での予後因子予後不良因子
年齢61歳以上
血清LDH正常上限を越える
Performance Status(全身状態)2~4
病期ⅢまたはⅣ期
節外病変数二つ以上
予後因子0または1低リスク(Low risk)
予後因子2低中間リスク(Low-Intermediate risk)
予後因子3高中間リスク(High-Intermediate risk)
予後因子4または5高リスク(High risk)

治療

悪性リンパ腫の治療には主に抗がん剤を用いる化学療法、抗体薬や低分子化合物などの分子標的薬、放射線療法があります。手術を必要とすることは稀です。治りにくいリンパ腫や、治療の効果が十分でない患者さんには、造血幹細胞移植が有効な場合があります。以下に各治療法につき説明しますが、どのような治療法が適しているかは、リンパ腫の病型や拡がりなどにより異なります。低悪性度リンパ腫の場合には、進行してくるまで治療は開始せず、慎重な経過観察を行うこともあります。

一般的に、これらの治療法は悪性リンパ腫に対してよく効くことが多く、治癒することも期待できますので、適切な治療を選択し、治療に専念することが大切です。

化学療法、分子標的薬

化学療法は薬剤によりリンパ腫細胞を殺す治療法です。リンパ腫にたいして感受性のある(効き目の高い)薬が数多く開発されており、これらの薬が組み合わせて使用されています。多くは2~3週間単位で行われ(これを1クールと呼びます)、副作用が強くなければ4〜8回(クール)繰り返します。治療中は、途中でリンパ腫が縮小しても、再発のリスクを減らすために、決められたクールを繰り返すことが必要です。

分子標的薬には、モノクローナル抗体薬や、低分子化合物が含まれます。リンパ腫細胞を含む一部の細胞だけに発現している分子や重要な働きを持っている分子に対して、結合したり、分子の働きを抑えたりする薬です。そのため、その他の細胞に対する毒性が比較的少なく、従来の抗がん剤と組み合わせて使用することも可能です。リツキシマブ(リツキサン®)はB細胞の表面に存在するCD20抗原(分子)に結合するモノクローナル抗体薬です。CCR4に対する抗体薬であるモガムリズマブ(ポテリジオ®)は成人T細胞白血病/リンパ腫や、一部の末梢性T細胞リンパ腫に使用されます。また、抗体薬に抗がん剤が結合されている薬剤(CD30を標的とするブレンツキシマブ・ベドチン(アドセトリス®)など)や、放射性同位元素を結合させている薬剤(CD20を標的とするイブリツモマブ・チウキセタン(ゼヴァリン®)など)があります。低分子化合物には、B細胞の活性化に重要な分子であるブルトンチロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤であるイブルチニブ(イムブルビカ®)などがあり、再発難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫に有効性が示されています。

多くの非ホジキンリンパ腫の初回治療に対して、標準的に用いられるのがCHOP療法という薬剤の組み合わせであり、B細胞性リンパ腫の場合は、さらにモノクローナル抗体薬であるリツキシマブを加えたR-CHOP療法が用いられます。 初発ホジキンリンパ腫の場合はABVD療法が標準治療として用いられます。 ただし、病型や病気の状態によっては、これらの治療法を工夫して実施する場合があります。

再発時には、一般的に以前に使用していない抗がん剤を含んだ組み合わせた救援療法を行います。CHASE療法、DeVIC療法、GCD療法、EPOCH療法(+リツキシマブ)などの様々な救援療法があります。

あなたの治療がどのようなスケジュールで行われるかは担当医がその副作用も含めて詳しく説明します。

例として、主に非ホジキンリンパ腫に用いられる代表的な治療法であるCHOP療法やR-CHOP療法について、その使用する薬と主な副作用を示します。 C:サイクロフォスファミド(エンドキサン®)、H:ドキソルビシン(アドリアシン®等)、O:ビンクリスチン(オンコビン®)、P:プレドニゾロン(プレドニン®)、R:リツキシマブ(リツキサン®)

化学療法による副作用(有害作用)とその対策

化学療法による主な副作用とその対策を説明します。使用する薬によりその程度はさまざまです。副作用の程度に応じて、治療を中断したり、抗がん剤の量を減らしたり、中止したりすることが必要になる場合があります。

白血球減少

からだを細菌や真菌、ウイルスなどの病原体から守っているのが白血球です。抗がん剤により白血球が減少してくると、からだに入った病原体を十分殺すことができなくなり、感染症が起きやすくなります。感染症が起きると多くの場合、悪寒や発熱を来します。感染症は起こった臓器により症状がでますが、肺に感染症がおこると肺炎となり、咳や痰もでるようになります。病原体が血液に入り込むと敗血症などの重い感染症が起きることもあります。感染症が起きた場合は、抗生剤などの抗菌剤を使用します。また、G-CSFという白血球を増加させる薬を皮下注射します。治療中はうがいや手洗いなどの感染予防を心がけてもらうことが重要です。

血小板減少

血小板は血を固まらせる作用を持っている血液の中にある細胞成分です。これが減少してくると血が固まらなくなり、出血症状を来します。重篤な場合は、消化管から出血したり、脳出血を起こしたりすることもあります。必要に応じて、血小板輸血をおこないます。

貧血

赤血球はからだの組織に酸素を運ぶ細胞です。これが減少してくると、動機や息切れ、疲れやすさを感じ、心不全を起こしやすくなります。少なくなりすぎた場合には、赤血球輸血を行います。

吐き気

多くの抗がん剤は吐き気と嘔吐を引き起こします。本人にとっては苦しい症状ですが、予防的に吐き気を抑える薬(制度剤)を使用することで、抑えることができます。現在では、数種類の薬がよく効く制吐剤が認可されています。抗がん剤の吐き気の程度に応じて、適切に使用することで、ほとんど吐き気を訴えない患者さんもいます。抗がん剤を使用してから数日たてば、自然に吐き気は消えます。

口内炎

口の中がただれて、痛みを伴い、食事が食べにくくなることがあります。うがい薬や軟膏を用います。予防的にうがいをすることと、口腔内を清潔にすることが大切です。当院では歯科と連携して口腔ケアを積極的におこなっています。

便秘や下痢

便秘薬・緩下剤や下痢止めを使用することにより症状を軽くすることができます。便秘を起こしやすい抗がん剤を使用する時は、緩下剤を予防的に内服して頂きます。下痢により失われた水分や栄養分は点滴により補います。

脱毛

脱毛はほぼ全員に起きます。多くの場合、抗がん剤治療開始後、2〜3週間後に始まります。抗がん剤を終了してから1~2ヶ月後にまた生え始めてきます。

肝機能障害と腎機能障害

多くの場合、症状がでるほどひどくなることはありませんが、血液検査により異常が認められることがあります。血液検査は定期的に行う必要があります。

ウイルスの再活性化

水痘ウイルスやB型肝炎ウイルスなどは、一度治った後もからだの中にごく少量のウイルスが潜んでいます。抗がん剤治療により免疫力が落ちると、これらのウイルスが再び増加して、帯状疱疹をおこしたり、B型肝炎が再活性化し肝障害や肝炎が起こることがあります。

血管外漏出

抗がん剤の中には血管の外に漏れると、皮膚や筋肉などがただれたり、組織が死んでしまうものがあります。点滴中に痛みや腫れがあった場合は中止して対応します。

出血性膀胱炎

排尿時に痛みを伴い、尿に血が混じります。水をたくさん飲んで、尿にでてきた抗がん剤の濃度が高くならないよう、またすぐ排尿できるようにします。抗癌剤以外でも免疫力の低下により、細菌やウイルスによる膀胱炎を起こすことがあります。

末梢神経障害(ビンクリスチン、ベルケイド、シスプラチンなど)

手や足の先がしびれるなどの症状がでることがあります。そのまま、しびれが残ることはほとんどありませんが、治療後も続くこともあります。

心毒性(ドキソルビシン)

蓄積性の心毒性があり、回数を重ねると心不全や不整脈が起きやすくなります。

輸注関連毒性(リツキシマブなどの抗体薬)

投与中、時に投与終了後に、発熱、悪寒、悪心、頭痛、かゆみ、発疹、咳、血管浮腫(舌、咽喉の腫れ)、血圧低下等の症状が起きることがあります。予防のために、点滴開始30分前に抗ヒスタミン薬、解熱鎮痛剤を使用します。初回が最も起こりやすく、2回目以降は起きにくくなります。

二次がん

がんの治療のあとに、別のがんを発症することがあります。

その他

まれに間質性肺炎、皮膚障害などがあらわれることがあります。

抗がん剤には副作用を認めますが、すべての副作用がすべての患者さんにおこるわけではありません。治療を成功させるためには、副作用を予防、コントロールして抗がん剤治療を継続しておこなうことが重要で、適切な支持療法をおこなうことで可能となります。つらいことや副作用はがまんせずに医師または看護師にお話ください。

治療が終われば赤ちゃんできるの?

治療法により異なりますが、男性も女性も子供を作ることができなくなることがあります。一般的に言えば、強い治療ほど妊娠する(させる)可能性は小さくなります。悪性リンパ腫の調査ではありませんが、白血病患者さんではこれまでにわが国で100人以上のお子さんが誕生しています。奇形の発生率は通常とかわりがありません。治療が終わってから1から2年以上たてば、子供を作っても差し支えないと考えられます。担当医と相談をしてください。

放射線療法

悪性リンパ腫は放射線に感受性のあるがんの一つです。病巣が限局している早期のリンパ腫などには放射線照射が単独もしくは短期的な化学療法と併用で実施されることもありますし、病巣が大きい場合でも化学療法の後で照射することもあります。強い疼痛などがある時には局所の症状を和らげるために照射することもあります。

照射は1週間に5回、4週間から6週間続ける場合が多いですが、体調により回数や期間が短くなることもあります。照射する部位の粘膜や皮膚、内部の組織に炎症がおき、部位に応じた症状が起こることがあります。

造血幹細胞移植

化学療法や放射線療法では、副作用として白血球や血小板、赤血球の減少が起こります。そのため、治療を強くすればリンパ腫細胞を殺す力は強くなりますが、正常の血液の減少も強くなりすぎて命に関わります。造血幹細胞移植は、標準的な化学療法や放射線療法よりも大量の薬剤の投与や全身に放射線を照射した後、正常な血液を回復させるため、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞の種である造血幹細胞を移植する治療法です。移植と言っても手術をするわけではなく、輸血のように点滴で輸注します。通常の治療よりも強力な治療を行うことができるため、治癒する可能性が高くなります。

造血幹細胞の種類により末梢血幹細胞移植と骨髄移植とがあり、標準的な化学療法や放射線療法では治癒する見込みが少ない場合にこの移植が検討されます。

がんの知識/いろいろながんの「造血幹細胞移植」もご一読ください。

自家末梢血幹細胞移植

化学療法をした後の回復期の末梢血中には造血幹細胞(血液の種)が流れています。この細胞を集めて凍結保存しておき、大量化学療法や全身放射線照射の後に移植(輸注)する治療法です。

悪性リンパ腫の場合、自家末梢血幹細胞移植が保険医療として一般的に行われています。再発した患者さんや初発でも通常の治療では効きが悪いと考えられる患者さんが対象となります。対象となる年齢は通常65才以下です。

同種骨髄移植・同種末梢血幹細胞移植・さい帯血移植

悪性リンパ腫の病型や病状によっては兄弟姉妹や他人からの同種骨髄移植が適応になることがあります。この場合提供者(ドナー)と患者さんとのHLA型(白血球の型)が適合する必要があり、兄弟間では4人に1人が適合します。適合者がいない場合には日本骨髄バンクやさい帯血バンクに登録することもあります。ドナーの幹細胞から生まれた免疫細胞が、腫瘍細胞を攻撃する作用も期待されますが、自分のからだの組織を攻撃してしまうGVHDという副作用も起ることがあります。自家末梢血幹細胞移植を行っても治りが悪いと考えられるような患者さんが対象となります。

臨床試験・新薬の治験

がんの治療成績を向上させるためには、新しい治療法の有効性や安全性を確認する臨床試験や新薬の治験が必要です。当院では、どの医療機関でもおこなっている標準的な治療以外に、より良い治療法の開発するため、臨床試験や新しい抗がん剤の治験をおこなっています。臨床試験や治験には、患者さんの協力が不可欠です。臨床試験や新薬の治験に興味ある方は、担当の先生にご相談ください。臨床試験や治験に関しては、「臨床試験」、「治験」をご覧ください。

治療効果判定、経過観察

治療後はCTやPETでリンパ腫の縮小の程度を確認します。骨髄や消化管など、CTやPETではわかりにくいところに病変があった場合は、骨髄検査や内視鏡検査などを行います。リンパ腫が完全に消失していれば完全奏効、画像上の面積で50%以上縮小していれば部分奏効と判定します。治療終了後は、定期的に診察や採血、画像検査を行い、再発や合併症がないかを経過観察していきます。

お問合せ

悪性リンパ腫について、あるいはその他の血液のがんについては、受診の仕方をご覧の上、お気軽に愛知県がんセンター血液・細胞療法部を受診ください。この際、すでに他の医療機関に受診中の方は主治医の先生からの紹介状を持参されるようお願いします。治療などに関する意見を聞く、セカンドオピニオン外来もおこなっていますので、ご利用ください。

愛知県がんセンターでは、どの医療機関でもおこなっている標準的な治療を提供する以外に、より良い治療法の開発するため、臨床試験や新しい抗がん剤の治験をおこなっています。より良い治療法の開発には患者さんの協力が不可欠です。臨床試験や新薬の治験に興味ある方は、担当の先生にご相談ください。臨床試験や治験に関しては、「臨床試験」、「治験」をご覧ください。