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口腔がん

口腔がんとは

口腔がんについて

頭頸部がんの中で口腔がんは最多(約25%)を占めており、年間2万人ほどが罹患すると推計されています(全国登録2016年度初診症例の報告. URL: http://www.jshnc.umin.ne.jp/pdf/2016syourei_houkoku.pdf)。口腔がんとは口の中にできるがんの総称であり、口唇、頬粘膜、下歯肉、上歯肉、硬口蓋、舌、口腔底の亜部位に分けられます。亜部位別で最も多いのは舌であり、過半数(約55%)を占めています。

男女比は約3:2と男性に多く、60歳代の罹患が最多ですが、20-30歳代の若年層にもみられます。口腔がんの主な危険因子として「喫煙」「飲酒」「口腔衛生不良」「慢性の機械的刺激」などが挙げられます。

口腔がんの症状

前がん病変といわれているものに白板症・紅斑症があります。白板症のがん化率は約10%、紅斑症は約50%ががん化するといわれています。そのため定期的な診察や、必要時は生検を行うなどの経過観察が必要です。

口腔がんの初期病変は口内炎様の症状を呈しますが、2週間以上治らない場合に疑われます。症状として痛み、食事摂取の時にしみたり、出血が見られることもあります。また進行してくると硬結(しこり)や潰瘍が増大します。がんの浸潤が進行すると、耳への放散痛、構音障害などが起こります。

口腔がんの検査・診断

がんの診断を確定するため生検を行います。病変の広がりを確認するため超音波検査やCTやMRI、PET-CT検査などを行って臨床病期(ステージ)を決定します。

口腔がんの病期

TNM臨床分類(口腔)

TX原発腫瘍の評価が不可能
T0原発腫瘍を認めない
Tis上皮内癌
T1最大径が2cm以下かつ深達度(DOI)が5mm以下の腫瘍
T2最大径が2cm以下かつ深達度が5mmをこえる腫瘍・または最大径が2cmをこえるが4cm以下でかつ深達度が10mm以下の腫瘍
T3最大径が2cmをこえるが4cm以下でかつ深達度が10mmをこえる腫瘍・または最大径が4cmをこえ、かつ深達度が10mm以下の腫瘍
T4a最大径が4cmをこえ、かつ深達度が10mmをこえる腫瘍・または下顎もしくは上顎の骨皮質を貫通するか上顎洞に浸潤する腫瘍・または顔面皮膚に浸潤する腫瘍
T4b咀嚼筋隙、翼状突起、頭蓋底に浸潤する腫瘍・または内頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍
NX領域リンパ節転移の評価が不可能
N0領域リンパ節転移なし
N1同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cm以下かつ節外浸潤なし
N2a同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmをこえるが6cm以下かつ節外浸潤なし
N2b同側の多発性リンパ節転移で最大径が6cm以下かつ節外浸潤なし
N2c両側または対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下かつ節外浸潤なし
N3a最大径が6cmをこえるリンパ節転移で節外浸潤なし
N3b単発性または多発性リンパ節転移で臨床的節外浸潤あり
MX遠隔転移の評価が不可能
M0遠隔転移なし
M1遠隔転移あり

病期(口腔)

0期Tis N0 M0
Ⅰ期T1 N0 M0
Ⅱ期T2 N0 M0
Ⅲ期T3 N0 M0、T1-3 N1 M0
ⅣA期T4a N0-1 M0、T1-4a N2 M0
ⅣB期Tany N3 M0、T4b Nany M0
ⅣC期Tany Nany M1

口腔がんの治療

口腔がんの標準治療は手術となります。手術規模はがんの占居部位によって多岐にわたります。ここでは最も頻度の多い舌がんについての術式をお示しします。

舌部分切除術

ステージⅠ/Ⅱの早期舌がんに対し行われる術式です。経口的に原発巣を切除します。切除による欠損部は縫縮または開放創とします。開放創に組織補強材であるPGA (polyglycolic acid:ポリグリコール酸)シート(ネオベール®)をフィブリン糊で被覆・接着する方法も行われています。

Pull-through(プルスルー)法

主にステージⅢ/Ⅳの進行舌がんに対する手術で舌半側切除以上の原発巣切除が必要となった場合に行われます。口腔内で舌を前方からできるだけ切り進めておいて、舌尖部にかけた糸を口腔内から頸部に向かって引き出します。こうすることで腫瘍深部の触診が可能となり、十分な安全域を確保しながら舌の切除を行うことができます。切除後の欠損部に対して、遊離皮弁再建が行われます。半側切除程度であれば前腕皮弁や前外側大腿皮弁が、全摘に近くなれば腹直筋皮弁が良く用いられます。

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引用文献

  1. 全国登録2016年度初診症例の報告. URL: http://www.jshnc.umin.ne.jp/pdf/2016syourei_houkoku.pdf
  2. Cramer JD, Sridharan S, Ferris RL, et al. Sentinel Lymph Node Biopsy Versus Elective Neck Dissection for Stage I to II Oral Cavity Cancer. Laryngoscope. 2019; 129: 162-169
  3. 日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌取扱い規約 第6版 金原出版 2018年