化学療法による副作用(有害作用)とその対策
化学療法による主な副作用とその対策を説明します。使用する薬によりその程度はさまざまです。副作用の程度に応じて、治療を中断したり、抗がん剤の量を減らしたり、中止したりすることが必要になる場合があります。
白血球減少
からだを細菌や真菌、ウイルスなどの病原体から守っているのが白血球です。抗がん剤により白血球が減少してくると、からだに入った病原体を十分殺すことができなくなり、感染症が起きやすくなります。感染症が起きると多くの場合、悪寒や発熱を来します。感染症は起こった臓器により症状がでますが、肺に感染症がおこると肺炎となり、咳や痰もでるようになります。病原体が血液に入り込むと敗血症などの重い感染症が起きることもあります。感染症が起きた場合は、抗生剤などの抗菌剤を使用します。また、G-CSFという白血球を増加させる薬を皮下注射します。治療中はうがいや手洗いなどの感染予防を心がけてもらうことが重要です。
血小板減少
血小板は血を固まらせる作用を持っている血液の中にある細胞成分です。これが減少してくると血が固まらなくなり、出血症状を来します。重篤な場合は、消化管から出血したり、脳出血を起こしたりすることもあります。必要に応じて、血小板輸血をおこないます。
貧血
赤血球はからだの組織に酸素を運ぶ細胞です。これが減少してくると、動機や息切れ、疲れやすさを感じ、心不全を起こしやすくなります。少なくなりすぎた場合には、赤血球輸血を行います。
吐き気
多くの抗がん剤は吐き気と嘔吐を引き起こします。本人にとっては苦しい症状ですが、予防的に吐き気を抑える薬(制度剤)を使用することで、抑えることができます。現在では、数種類の薬がよく効く制吐剤が認可されています。抗がん剤の吐き気の程度に応じて、適切に使用することで、ほとんど吐き気を訴えない患者さんもいます。抗がん剤を使用してから数日たてば、自然に吐き気は消えます。
口内炎
口の中がただれて、痛みを伴い、食事が食べにくくなることがあります。うがい薬や軟膏を用います。予防的にうがいをすることと、口腔内を清潔にすることが大切です。当院では歯科と連携して口腔ケアを積極的におこなっています。
便秘や下痢
便秘薬・緩下剤や下痢止めを使用することにより症状を軽くすることができます。便秘を起こしやすい抗がん剤を使用する時は、緩下剤を予防的に内服して頂きます。下痢により失われた水分や栄養分は点滴により補います。
脱毛
脱毛はほぼ全員に起きます。多くの場合、抗がん剤治療開始後、2-3週間後に始まります。抗がん剤を終了してから1~2ヶ月後にまた生え始めてきます。
肝機能障害と腎機能障害
多くの場合、症状がでるほどひどくなることはありませんが、血液検査により異常が認められることがあります。血液検査は定期的に行う必要があります。
ウイルスの再活性化
水痘ウイルスやB型肝炎ウイルスなどは、一度治った後もからだの中にごく少量のウイルスが潜んでいます。抗がん剤治療により免疫力が落ちると、これらのウイルスが再び増加して、帯状疱疹をおこしたり、B型肝炎が再活性化し肝障害や肝炎が起こることがあります。
血管外漏出
抗がん剤の中には血管の外に漏れると、皮膚や筋肉などがただれたり、組織が死んでしまうものがあります。点滴中に痛みや腫れがあった場合は中止して対応します。
出血性膀胱炎
排尿時に痛みを伴い、尿に血が混じります。水をたくさん飲んで、尿にでてきた抗がん剤の濃度が高くならないよう、またすぐ排尿できるようにします。抗癌剤以外でも免疫力の低下により、細菌やウイルスによる膀胱炎を起こすことがあります。
末梢神経障害(ビンクリスチン、ベルケイド、シスプラチンなど)
手や足の先がしびれるなどの症状がでることがあります。そのまま、しびれが残ることはほとんどありませんが、治療後も続くこともあります。
心毒性(ドキソルビシン)
蓄積性の心毒性があり、回数を重ねると心不全や不整脈が起きやすくなります。
輸注関連毒性(リツキシマブなどの抗体薬)
投与中、時に投与終了後に、発熱、悪寒、悪心、頭痛、かゆみ、発疹、咳、血管浮腫(舌,咽喉の腫れ)、血圧低下等の症状が起きることがあります。予防のために、点滴開始30分前に抗ヒスタミン薬、解熱鎮痛剤を使用します。初回が最も起こりやすく、2回目以降は起きにくくなります。
二次がん
がんの治療のあとに、別のがんを発症することがあります。
その他
まれに間質性肺炎、皮膚障害などがあらわれることがあります。
抗がん剤には副作用を認めますが、すべての副作用がすべての患者さんにおこるわけではありません。治療を成功させるためには、副作用を予防、コントロールして抗がん剤治療を継続しておこなうことが重要で、適切な支持療法をおこなうことで可能となります。つらいことや副作用はがまんせずに医師または看護師にお話下さい。
治療が終われば赤ちゃんできるの?
治療法により異なりますが、男性も女性も子供を作ることができなくなることがあります。一般的に言えば、強い治療ほど妊娠する(させる)可能性は小さくなります。悪性リンパ腫の調査ではありませんが、白血病患者さんではこれまでにわが国で100人以上のお子さんが誕生しています。奇形の発生率は通常とかわりがありません。治療が終わってから1から2年以上たてば、子供を作っても差し支えないと考えられます。担当医と相談をして下さい。